2025年最新NFT事情雑感:投機から実用へ、新たな価値創造の時代

NFT1 市場は、2021年から2022年にかけての爆発的ブームを経て、2025年現在、より成熟した実用的な段階に入っているといわれる。一時的な投機熱が収まったいま、真の意味でのNFTの価値が問われる時代を迎えているようだ。
以下はNFTのこれまでとこれからをめぐる、あくまで個人的な雑感となる。

投機バブルから実用性へのシフト

そもそも2021年から2022年にかけてのNFTブームは、主に投機目的による取引が中心だったといえる。高額な取引が連日報道され、「デジタル資産への投資」という名目のもと多くの投資家が市場に参入した背景がある。

NFTブームの持続可能性

けれどもこの盛り上がりは持続可能性に欠け、多くのプロジェクトが実用性を伴わないまま、その価値は暴落の憂き目にあう。NFTのなかでも特別に価値が高い優良コレクションとされるブルーチップ(「CryptoPunks」、「Bored Ape Yacht Club (BAYC)」、「Azuki」など)はいまなお人気があるものの、それでも当時の価値からは随分と下がってしまっているものが少なくない。

こうした経験を経て、2025年の市場では投機的な要素よりも、実際の用途と価値に基づくNFTプロジェクトが注目されるようになってきている。市場参加者は、短期的な利益追求から長期的な価値創造へと視点をシフトしているといえそうだ。
(上記のブルーチップNFTにしても、純粋なアートというだけでなく、よりコミュニティのエコシステムに重点を置き、アニメ作品の創作やメタバースの構築など意欲的な取り組みが共創によってなされている)

当初のNFTコレクションは玉石混交

正直、個人的にもこの状況にはホッとしていたりする。ブーム当時の熱狂はたしかに投機の面で魅惑的であったかもしれない。クリエイター側にも一攫千金のチャンスがなかったわけではないだろうし、大小の差こそあれ、実際に先行者利益を得た人も多いことだろう。
けれど、どう考えても実際の価値とは不釣り合いなNFTコレクションが乱発されていた感じは否めず、個人的に作品を出品するのを保留した理由もそのへんの危うさにあった気がする。
ようやく地に足のついた議論がNFT界隈でできるようになった現在の状況というのは、むしろ歓迎すべきことではないだろうか。

NFT本来の意義、唯一性と「デジタル所有権」の確立とその揺らぎ

ここでいったん、NFTの本来の価値について振り返っておきたい。
NFTの本来の価値とは、デジタルコンテンツに唯一性をもたらし、デジタル資産の所有権の証明を可能にする点にあったと思う。NFTは単なる投機商品である前に、まずはデジタル時代における新たな所有概念を確立する革新的な技術として迎えられたはず。

デジタルコンテンツに対する所有権の技術的保証

従来、デジタルデータは簡単に複製可能であり、「所有」という概念が機能しづらかった。それがブロックチェーンの技術に裏づけられたNFTの登場により、デジタル資産に対する所有権が技術的に保証されるようになった。アート、音楽、ゲームアイテムなど、様々なデジタル資産が、NFTとして明確に「所有」することができるようになったという流れ。

ビットコインやイーサリアムをはじめとするFT(Fungible Token)の認知度も上がり、NFTの売買に仮想通貨やウォレットを使うという前提も、当時はまだ多くの人にとって新鮮で、むしろNFTのブランディングにとってはWeb3思想の普及とともにプラスに働いたのではと思う。

法的な所有権とは異なるデジタル所有権

もっとも、NFTのデジタル所有権と法的な所有権は別であって、そのことが必要以上の混乱を世間一般に招いた面があるのも事実だろう。
NFT購入者は通常、そのNFTが関連づけられているデジタルアートやコンテンツの法的な意味での所有権を持つわけではなく、言い方を変えれば、単にそのNFT(所有権の証明書のようなもの)を保有しているということに過ぎない。著作権などの法的権利は制作者に残る場合がほとんどで、商業利用するには別途許可が必要なことが多かったりもする。

進化・拡張し続けるNFTの規格

さらにはERC-1155のように、1つのスマートコントラクトでERC-20のような代替可能なトークンとERC-721のような非代替性トークンの両方を管理でき規格が登場したことで、NFT特有の「デジタルコンテンツに結びついた唯一無二なトークン」としての価値が揺らいでしまった面もあるかもしれない。
実際にはゲームアイテムなどに必須な仕様でもあり、当然ながら存在意義はあるだけに、NFTの規格に対する理解が一般層には難解ととられてしまったのだとしたら残念な部分ではある。

軽く復習しておくと、ERCとは、イーサリアム2 ブロックチェーンの技術的な仕様を定義する規格。スマートコントラクトやトークンを作成するための共通ルールが設けられ、互換性や効率性を向上させる役割がある。
最初に提案されたNFTの標準規格であるERC-721に対し、人気NFTコレクションの「Azuki」が独自に拡張させたERC-721Aが登場したりと、絶えず拡張・進化を続けている。いかに煩雑になり過ぎずに成長できるかが今後の発展の鍵となりそう。

老舗NFTマーケットプレイスの新たな船出、OpenSea2の可能性

NFTはクリエイターへの継続的なロイヤリティ支払いなど、従来では実現できなかった新しい仕組みを可能にしたという点も大きな魅力の一つ。
ところがしだいにNFTマーケットプレイス間での競争激化が進むにつれ、一部のプラットフォームが手数料削減を余儀なくされ、結果的にクリエイターへのロイヤリティも減少するという側面があったことも見過ごせない。

そんななか、老舗のNFTマーケットプレイスであるOpnenSeaは今年2025年5月30日に満を持してOpenSea2(OS2)の正式リリースへ漕ぎつけた。
UIの刷新はもちろん、複数のブロックチェーンに対応するクロスチェーン取引の対応や、新しい報酬システム「Voyages」も追加され、より便利で多機能なプラットフォームに進化している。

OpenSea2の画面(出典:OpenSea)

トレーダーを意識したPro Mode

新しいUIで特に気になるのはPro Modeと呼ばれる画面のインターフェイス。完全にトレーダーを意識した設計なのだけれど、これと似たUIを先に導入したのはライバルのNFTマーケットプレイスであるBlur。
Blurの登場時、トレーダーに特化したような仕様が満載であったのに加え、トークン発行時の大規模なエアドロップなどインセンティブが提供された。それらの戦略が引き金となり、OpenSeaの地位は失墜、その後NFT全体のフロアプライスが壊滅的に下がっていったのも記憶に新しい。
OpenSea2のPro Modeには、高度なデータ分析やリアルタイムの市場データ、効率的な在庫管理機能などが含まれているのだけれど、時代の趨勢もあり、Blurにリベンジする意味でも採用せずにいられなかったというのが実際のところだろう。

切り替え可能な2種の表示モード(出典:OpenSea)

独自トークン$SEAへの期待

また、初のOpenSea独自トークンとなる$SEAの導入が示唆されていて、かなりの注目を浴びている。ガバナンス兼インセンティブトークンとしての機能発揮が期待されているのは間違いない。
こちらも先行して独自トークン$BLURを導入しているBlurの存在が当然ながら意識されているだろう。FT(Fungible Token)の領域でも再び両者の競争は繰り広げられそう。

いずれにせよ、独自トークンや報酬システムのなりゆきによって今後のNFT市場成長への影響は少なくないだろうから、斬新なクリエイターエコノミーを生み出したOpenSeaのこと、当初の創造的な理念までもが突き崩されてしまわないことを強く望みたい。

RWA(Real World Asset)との融合という堅実なトレンド

2025年におけるNFTの最も注目すべき動向の一つが、RWA3 との統合ではないだろうか。RWAとNFTの掛け合わせ自体は以前からあるものの、不動産、アート、高級品などの実世界資産をトークン化することで物理的アイテムへの投資を変革する力となることがようやく社会一般に浸透してきた感がある。話題の宿泊施設や高級レストランの利用権をトークン化したケースなどはその一例になる。

この仕組みによって、従来は高額すぎて個人投資家がアクセスできなかった資産に対し、分割所有という形で投資が可能になったということは大きい。NFTを使用したRWAのトークン化の主要な利点の一つは、分割所有の機会。投資家は資産全体を購入する必要がなく、より小さく管理しやすい分割単位での所有が可能になる。
たとえば、高額な不動産物件や名画、貴金属などを複数の投資家が分割して所有できるようになり、従来は富裕層のみが参加できた市場への参入障壁が大幅に下がることに。2024年と2025年において、より多くの実世界資産がトークン化されており、新しい投資機会が開かれることが期待されている。

AI技術との連携で進化するNFT

AI(人工知能)技術とNFTの融合も、2025年の重要なトレンドではないだろうか。世間ではWeb3やメタバースよりも日進月歩のAIに注目すべきというような風潮があるようだけれど、正解はそれらを掛け合わせて可能性を拡げていくことだと思われる。

期待が膨らむAIプロジェクト、Zero Gravity

個人的にいま最もローンチを待望しているのが、0G (Zero Gravity)Labs。AIに特化したブロックチェーンインフラを開発している画期的なプロジェクトで、主にAIアプリケーションの効率的な運用を目指してシステム設計が進められており、2025年7月(初旬)現在の段階で3rdバージョンのテストネット(Galileo Testnet)が提供されている。

AIエージェント×NFTの可能性

その0G Labsが推し進めるNFT関連の仕組みがインテリジェントNFT(以下、iNFT)ということになる。AIエージェント4 ×NFTを実現しようというもので、彼らの設計したERC-7857という新規格にその革新性が結実している。

iNFTは、AIエージェントをNFTとして表現することで、取引の効率化や完全な分散化、資産管理の独自性を可能にすることを目指す。
たとえば、ERC-7857では暗号化されたメタデータを利用して、AIモデルや知識を安全に管理しつつ、機密性を保ちながら活用できる。
これにより、AIエージェントが進化していく過程で、その価値や機能をリアルタイムで更新できるという画期的な仕組みになっている。

この規格の導入で、Web3やメタバース内でのAI利用の幅が広がる可能性は充分にあるのではないだろうか。これら進化するデジタルコレクタブルの機能がユーザーエンゲージメントを刺激し、二次市場での価値をフェアに高める効果を持つというストーリーが見えてくる。
AIとNFTの融合により、ユーザーの感情に反応するクリエイティブ作品や、感情分析を通じた双方向性を持つアート作品の創作なども大いに期待されるところ。XRとの連携も相性がいい分野と思われるので、ここ数年のあいだに何かしら発展がありそうな気がする。
尚、0G Labsの紹介やiNFTの進捗については、近いうちに単独の記事にまとめてみたいと思っている。

2025年後半のNFT市場の展望

前述したように、上に見てきたものはあくまで個人的な雑感なので、ほかにもいろいろなNFTプロジェクトが世界中で始動しているはず。
概観としての2025年のNFT市場は、ブーム期に顕著だった投機的な取引から、実際の用途と価値に基づくプロジェクトへと移行が進んでいる。
企業や個人は、NFTを投機的な目的のみならず、ビジネスやライフスタイルに有効なツール、デジタル資産管理の手段などとして意識的に活用してゆくなかで、次の戦略として見えてくるものがあるだろう。

註釈
  1. NFT(Non-Fungible Token):代替可能なトークン。デジタルデータに唯一性を持たせる技術。 ↩︎
  2. イーサリアム(Ethereum):スマートコントラクトや分散型アプリケーション(DApps)を構築するためのブロックチェーンプラットフォーム。 ↩︎
  3. RWA(Real World Assets):現実世界にある資産(不動産、株式、債券、金、美術品など)をブロックチェーン上でトークン化する仕組み。 ↩︎
  4. AIエージェント:ユーザーが設定した目的に向かって自律的に判断・行動するAIシステム。 ↩︎

FEATURES

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